フィレンツェの夢と憧れ

花の都、ルネサンス、そして...



 冬の日、フィレンツェに沈む夕日を見に行った。

 何億年にも渡って沈みつづけてきた太陽は、何時から、人の心にこんなに多くのことを語りかけるようになったのだろうか。

 石造りの街、フィレンツェに、ゆっくりと日が沈む。それにつれて、街の燈がすこしづつ増えていく。ルネサンスの頃の人々が見た風景も、これと同じだったに違いない。馬車は自動車に変わり、灯りは電気に、しかし人の心も、風景も、太陽も同じ地平を生きている。


 フィレンツェは、街全体が美術館だといわれる。がそこにあるのは、各地から収集された美術品ではない、すべてフィレンツェで生まれ、育ち、今でも人々が育てつづけている、絵や彫刻、建築、大聖堂、石畳、そこに込められた画家、彫刻家、建築家、職人達の思いとその積み重ねは、行きずりの旅人に過ぎない私にも、時を超えて語りかけ、新たなるものへの活力を与えてくれる。

 この街の活力が喚起する音楽のイメージ、石畳の石の一枚一枚が語りかけてくる音楽に耳を傾け、聴くことができれば、と思いつつ作曲の筆を進めた。どこまでその声を聴くことが出来たかは・・・。


 もう一度フィレンツェに行ってみたいと思っている。いつも新たなる何かを語りかけてくれる街。何億年にも渡って沈みつづけてきた夕日は、今日もまた沈む。しかし一度として同じ表情だったことはないのである。