NHK大河ドラマ「炎立つ」

 東北を舞台に、栄華を極め、滅びていった奥州藤原氏、八百年前の"兵(つわもの)どもが夢の跡"は、今も平泉中尊寺の金堂に見られるように、輝きを失っていない。東北は敗北の歴史だと言われる。

 常に"中央"に蹂躙されてきた。そんな中で、この地に夢を掛け、真に平和なユートピアを作ろうとした藤原経清を始めとする奥州藤原氏の夢を、私も音楽を通して語りたい。"炎"は激しく、美しく、沸き立つように燃え盛る。

 大地から沸き立つ炎、そんなイメージでこのテーマ音楽を作曲したのは、1992年の秋のこと、12月1日に大友直人氏の指揮、NHK交響楽団の演奏により録音された。

 このドラマの放映が1993年の7月から、ということを考えると、ずいぶん早い時期に作曲した、いや作曲しなければならなかった事がお分かり頂けると思う。この時にはまだ、原作が書かれている途中、勿論撮影はまだ始まっていない。そんな中でのテーマ音楽の作曲は、イメージへの旅から始まった。


 まず、演出家、プロデューサーと東北を旅し、現地を踏み、原作者の高橋克彦さんを盛岡にお訪ねし、鬼剣舞、鹿踊、鴨沢神楽など、東北に伝わる芸能を見、聴き、大地に息づいている"東北"の姿を文字どおり肌で、足で感じ、スタッフ一同同じ空気をすう。その印象を持ち帰り、もう一度演出スタッフとのディスカッションを経て、作曲に取りかかった。

 昼間の稲刈りを終えて踊って下さった剣舞、鹿踊、神楽の皆さんの素朴で真摯な顔を思い出しながら。


 第1集はテーマ音楽他17曲、第2集は23曲が収められている。

 テーマ音楽は、大友直人指揮、NHK交響楽団の演奏、他は菅野由弘指揮、アンサンブル・レニエの演奏。

 大河ドラマの32年に渡る歴史の中で、サントラ盤が2枚出たのは始めてとのことなので、お聞き頂ければ幸いである。