新・半七捕物帳


 人情に厚く、カッコ良くない岡っ引き「半七」、鼻っ柱が強く、怒り、笑い、一途である。

 番組の音楽集録が始まる約一ヶ月前、演出部との初打ち合わせがあった。演出家とプロデューサー、様々なスタッフとの顔合わせ、楽しく、緊張する一時である。

 ここで、今回の「半七」が話し合われ、「カッコ良くない岡っ引き像」が浮かび上がってくる。演出家から「今回の音楽にはロックの要素があっても良いかも知れない」など様々具体的な話が出る。いよいよ夢が膨らみ、楽しみに最初のラッシュが出来上がるのを待つ。「ラッシュ」とは、映像の編集が終り、「これに音楽を入れれば完成」という状態のテープを指す。

 そして、最初のラッシュ完成、あらかじめ台本上でイメージは持っているが、さて何が飛び出すか、最も楽しみな瞬間である。テープが回り始める、「これは、ウッド・ベースとフリューゲルだ、アコースティックなジャズの要素を持ち込もう」と、ほぼ瞬間的に思った。

 結果は、お聞きの通りである。


 連続ドラマの音楽は、毎週作曲する。けっこうハードだ。

 「新・半七捕物帳」の場合は、火曜日にラッシュを見ながら打ち合わせ、次の週の月曜日に録音、翌日(火曜日)また打ち合わせ---、の繰り返し、毎週12曲から17曲位作る。

 ドラマの音楽は、映像に時間をピッタリ合わせなければならない、半七のテーマや、捕り物の音楽は何度も登場するが、毎回長さが違うのである。

 今週は2分35秒、来週は1分59秒だったりする。それをぴったり合わせる。また動きに合わせたり、場面転換に従って曲調も変える。
 全体3分25秒の音楽シーンの中で、最初の23秒は前の場面の悲しみを引きずり、その後気を取り直して感慨にふけり、1分28秒目に怒りが爆発し、2分08秒目に飛び出して行く、といったシチュエーションに合わせて行くわけだ。

 そこに更に「1分8秒目のあたりで、思いが過去の喜びに変質するのをにおわせて欲しい」といった演出家の注文が加わる。しかも音楽としてある程度自然に運ばなければならない。
 が、こうして作曲するのは意外と面白い。大変なのは演奏の方だ。とにかく1秒でも狂ったら録り直し。


 昨今、予算の関係で音楽を作曲依頼できない番組が散見される。番組を最初から最後まで見ても、「音楽:○○○○」という名前が出てこない番組がそれである。
 よく聞いてみると、何となく合っているような、合っていないような音楽が流れている。最後に「選曲:○○○○」と言う名前が出てくるのがそれだ。
 お金はなくとも、音楽がないとドラマが成り立たないので、CDを買って、いわゆる「有りもの」の音楽を集めてきて、映像に張り付ける。

 この「半七」のCDも突然どこか別の番組から聞こえてくる可能性がある。しかもとんでもないシーンに付けられて。

 これは、我々作曲家の側から言わせていただけば、泥棒か、詐欺師のような行為だ。始末が悪いのはこれが合法的なのである。
 作曲者本人はこれに意義を申し立てることができないシステムになっている。この番組の音楽を作るのに、作曲料、演奏料、スタジオ使用料、など数十万円から百万円位の費用がかかる。

 ところが、そうして作られた音楽を選曲に使うには、数千円を支払えば合法的に使えるのだ。世の中の常識では、四千両を泥棒されたとして、「泥棒!」と叫べばお縄になる。半七が出てきて、捕まえてくれるに違いない。

 ところが、一両二朱程度を納めると、お上が認める。「お上ってものはな、昔からそう云うもんなんだ」と言う科白が、番組にも出てきたっけ。


 一本づつ読み切りの番組なので、定番の「半七のテーマ」や「探索」などの他に、毎回別々な主人公のためのテーマが登場する。
 が、それらはここに収録しきれないので番組でお楽しみ頂きたい。

 CD音楽編「新・半七捕物帳」は、一種の音楽物語のような構成にしてみたので、あなたのストーリーを組み立てながらお聞き頂ければ幸いである。